企業研修DX「階層研修」(多忙な中間管理職に“経営視点”を埋め込む、グローバル・オンライン研修)

2025-06-17

企業研修DX「階層研修」(多忙な中間管理職に“経営視点”を埋め込む、グローバル・オンライン研修)

# 階層研修

# 部長研修

# ハイブリッド研修

# 越境学習

# MBA

# 交流促進

コロナ禍以降、eラーニングやオンラインミーティングツールを使った企業研修のデジタル化が急速に進み、もはや当たり前となってきました。
Aoba-BBTでは、2010年前後からすでに「ハイブリッド型」で「部長研修」を行なってきました。それはどのようなものでしょうか?今回は企業研修における課題解決に迫ります。

登場人物

  • 瀬戸 真吾

    瀬戸 真吾

    伊達商会ホールディングス取締役副社長。商社・伊達商会傘下のグループ横断の管理機能を統括する、会社一筋40年の副社長。

  • 森川 知世

    森川 知世

    中核事業会社:伊達商会エナジーの部長。
    経営幹部候補生が受講する研修、「NEXT経営リーダー育成プログラム」の第6期を今年受講することになっている。
    新人時代に瀬戸が管轄する部署に配属されて以来、瀬戸から強い影響を受けてきた。

  • 成瀬 あかり

    成瀬 あかり

    人材育成・教育サービスを提供する株式会社Aoba-BBTの部長。
    ここ数年、瀬戸副社長の求めに応じて経営人材育成の体系設計と施策づくり、運営を支援している。親しみやすく、丁寧なファシリテーションが持ち味。

経営幹部育成に関する課題

総合商社として長い歴史を持つ伊達商会では、祖業である貿易を軸に多角化し、現在ではIT・エネルギー・素材・化学・小売など幅広く事業展開をしてきた。
国内外、さまざまな拠点を構え多くのポジションが生まれてきたことで多数の中間管理職層を生む育成環境にあった半面、多くのミドルは自分が属する事業・業界の慣習に染まり、ホールディングス全体を見渡す視野や事業と事業の交差点で生まれる新しいビジネスモデルへの感度が上がらず、「経営人材が小粒化している」という経営課題を抱えていた。

大きな窓から光が入る伊達商会本社のレセプションで、副社長の瀬戸真吾と、同社の経営幹部候補育成に長らく伴走している成瀬あかりが談笑している。瀬戸の姿を見つけて、通りかかった傘下の事業会社部長職の森川知世が会釈をすると、瀬戸が手招きして森川を呼び寄せた。

森川 知世

瀬戸さん、ご無沙汰しております。
たまたま出張で本社に来ましたが、お会いするのは2〜3年ぶりですね!

瀬戸 真吾

やあ、久しぶりだねぇ。元気でやってる?
部長になって、ぐいぐい組織を引っ張ってるって聞いたよ。

森川 知世

そんな、とんでもないです……。
今の会社に出向してまだ日が浅い上に、昨年から部長として広い業務を見なければいけないので、正直、これまでの経験では乗り越えられないことが多いと感じていて、もがき続ける毎日です……。

瀬戸 真吾

いつも強気な森川さんらしくない発言だね。
でも、部長になると責任は広く、重くなるよね。……そういうタイミングだからこそ、今年はきみにも『NEXT経営リーダー育成プログラム』を受けてもらうんだよ。

森川 知世

そ、そういえば……、5月から始まる長期研修を受講するよう先週メールが来ました……。
今、立ち上がったばかりのプロジェクトも多い中、拠点の仙台から毎月本社に来て研修を受けて、しかも10ヶ月も続くなんて……冗談かと思っていました……。

瀬戸 真吾

いや、本当だよ(笑)。これまで5年続けて、第1期~5期の先輩たちもみんなやり通しているから大丈夫さ。
今日はこの研修を企画・運営している成瀬さんと最終打ち合わせをしていたところなんだ。

成瀬 あかり

森川さん、はじめまして。今年1年間ご一緒させていただきます、成瀬と申します。
お忙しい時期の受講は不安もあると思いますが、最大限サポートしますのでご安心くださいね。

忙しい部長職が、なぜ長期に時間を割いて学ぶのか?

森川 知世

それではお伺いしますと、研修を受けられること自体は嬉しいんですが……なぜ10ヶ月もかけるんですか?

成瀬 あかり

いい質問ですね。部長になった時点ですでに広い業務を担われていますが、経営層を目指そうとすると、そこから「さらに二段階上」くらいの視座と先見性が求められます。
そうした視座を身につけるには、短期の知識詰め込み型ではまず難しいんです。

瀬戸 真吾

この研修では、さまざまなケース教材やともに学ぶ仲間の会社の課題に触れながら、現経営陣との対話もするし、わが伊達商会を取り巻く環境変化や業界構造の行く末について議論を重ねるんだ。少しずつ経営思考を積み重ねていくイメージだね。

成瀬 あかり

瀬戸副社長と議論するセッションもありますし、研修の最後にはみなさんの戦略案にレビューいただきます。約1年間、経営知識を身につけながら、議論と検討を続けていくと、あるとき「部長としての今の守備範囲を超えて考えている自分」にきっと出会えますよ!

リアル/オンラインをハイブリッドして学び続けやすく

森川 知世

……なるほど(いまの話を聞いて、より大変そうに思えてきた 汗)
毎回、本社まで出張しなきゃいけないんですよね?オンラインではまずいですか?

成瀬 あかり

もちろん、全部が対面というわけではありません。
講義のインプットはオンデマンドで空いた時間に視聴できるようにしてあります。ディスカッションも大部分はオンラインですが、月に一度程度、集合研修としてリアルに集まっていただく
ことになります。

瀬戸 真吾

リアル研修では、講師との深い議論やグループワークをたっぷり行うよ。オンラインでは切り込みづらい深さまで、どっぷりとね(笑)
そして食事の時間も共に過ごしながら、同じ職層同士でざっくばらんに情報交換をして、今後も支え合える仲間を作ってほしいんだ。ほかの事業には、きっと面白い視点を持ったあらたな仲間がいるぞ。

成瀬 あかり

このプログラムの第2期からは海外駐在の受講者も毎年おり、昨年からは現地採用の東南アジアの事業責任者なども参加しているので、オンラインで時差や距離を超えて学び続けられる仕組みにしていますよ。
国内でも東海や九州、さらに成長著しい東南アジアやオセアニアで事業を牽引する国籍も異なるリーダーとも学び合う環境です。

瀬戸 真吾

僕も国内外の出張はそれなりに多いけど、この研修で学ぶ動画コンテンツは全てアプリにダウンロードできるから、機内でもどこでも持ち運べて見れるのが本当に便利。
毎年、新しいコンテンツに変わるんだけど、僕も人事管掌役員としてちゃんと見ているんだよ(笑)

社外でMBAを学ぶのと、社内で特別に設計されたプログラムで学ぶ違いは?

森川 知世

瀬戸さんも学び続けているんですね…!
うちのグループは事業の幅が広くて知らないことや知らない人は多いので、いろんな人としっかり話して深く知り合えるのはうれしいです。でも実は、もう少し落ち着いたら週末にMBAを学びに行きたいとも思っていたんですが、ビジネススクールで学ぶのとはどこが違うんですか?

瀬戸 真吾

MBAで学べる体系だった知識は素晴らしい。それに他社の優れた人材から得られる刺激も大きい。
ただ、今の自分たちの事業に即した実践的な「視座の転換」までは得られないかもしれない、と私は感じている。それに、他社の人材と交流する前に、自社グループ内で越境して、交流しあってほしいんだ。うちの中にも優秀なミドルがたくさんいるから。

成瀬 あかり

このプログラムでは、「もし私がこの会社の”社長”だったら?」という問いを何度も繰り返します。
実在する会社を取り上げ、ファクトベースで外部環境(市場・競合)・内部環境(自社)を分析し、柔軟な発想で戦略の方向性を思考します。その一連の問題解決のアプローチを通じて、問題解決の思考プロセス、業界・企業の理解を促します。
こうした問いかけによる戦略的思考を鍛える経営人材特訓手法を、Aoba-BBTでは独自に開発し「RTOCS®(Real Time Online Case Study)」と呼んでいます。

MBAでも様々なケーススタディに取り組みますが、それは過去の事例や架空のケースなので、これからの伊達商会を担うみなさんが学ぶには必ずしも最適とは言えないのです。

RTOCS®

『もしも、あなたが”最高責任者”ならばどうするか?』戦略的思考を鍛えるケーススタディ。

瀬戸 真吾

それと、特にプログラムの序盤では、昨年受講した先輩がメンターとして最初の議論や学習ペースづくりを伴走してくれるよ。グループ会社を跨いでヨコでつながるだけでなく、この研修の受講者は期が違ってもタテでつながり、うちのこれからを担う部長陣同士、相談しあえる関係性を築けるのも社内プログラムの良さだね。

長期間ムリなく学び続けるコツって‥?

森川 知世

先輩がプログラムの序盤で伴走してくれるんですね、それは心強いです!
ちなみに、インプットとアウトプットの仕方や、学びの習慣作りで、何かコツがあったら教えてください!

成瀬 あかり

最初は焦らずに、毎週、必ず学びの時間を予定に組み込むことを意識してほしいです。
たとえ短時間でも、自分の思考を棚卸しする時間を確保することです。

森川 知世

う‥、最近は会議も増えて日中は時間が全然なく、自分の思考を整理する時間を作れていないなって痛感していたところなんです‥。

瀬戸 真吾

ハハハ、分かるよ。
でも、右から左に捌くだけでは状況は改善されないから、やはり深く思考する時間は自分でつくる必要があるね。業務だけでなく集合研修やディスカッションで異なる視点に触れる際、「違いを楽しむ」スタンスを持てるとよいね。
早く「正解に辿り着く」ことに固執せず、何度もアウトプットとインプットを繰り返そう。
きっと前進していくさ。

森川 知世

……今日ここで聞いた話だけでも、すでに学びが深いです。
10ヶ月間、大変そうでまだ不安もありますが、楽しみながら頑張りたいと思います!

瀬戸 真吾

成瀬さんの会社は、オンラインの大学院大学も運営しているから、忙しいビジネスリーダーが学び続けられる学習環境づくりを大前提にしてプログラムを企画・運営してくれているんだ。
不安や迷いもオープンにして、みんなで工夫しながら新しい学び方を身につけていくのを期待してるよ!

成瀬 あかり

うちはオンラインの学習システムも自社で開発しているので、気になることがもしあれば何でも言ってください。
森川さんの先輩方も、業務と学びの両立は大変だと口にしながらうまく適応されてきましたし、この研修で1年間アウトプットしたことはリストにでき、それは今後の森川さんのキャリアにおいて不可欠なノートになるはずです。1年間様々な刺激を浴び、一緒に次のステージへ進んでいきましょう!

課題解決のために実行した施策

【ハイブリッド学習プラットフォーム「AirCampus」を用いた経営幹部候補育成】

会社の中核であり業務多忙な部長層への研修として、普段の「業務目線」を二段階引き上げて「経営視点」を磨くことを目的に年間プログラムを実施。国内外に散らばる様々な事業から部長層を集め、どこでもいつでも経営視点をインプットできる映像講義、非同期で議論できるオンラインディスカッション、そしてビデオ通話でグループ討議を深めながら、集合研修でしか実現できない熱量や密度の濃さで経営幹部候補を鍛え上げています。所属する事業の壁を越えてヨコで連帯し、期を跨いでタテでつながる部長研修を継続しています。

まとめ

  • 経営者候補の育成に必要な「経営視点」を磨くには、知識付与やスキル習得とは異なる設計が必要
  • 短期間では身につかない視点・視座を身につけるため、1年近い研修期間を設けるのが有効
  • オンデマンド学習とオンライン研修を組み合わせることで、業務に支障をきたさず学習可能
  • スキマ時間を活用し、スマホで学びながら気軽に発言できる環境が重要
  • 集合研修で幹部候補同士が深く知り合い、つながることが経営基盤の厚みにつながる
  • 実在する企業の経営課題を題材に「自分がこの会社の社長だったら」という課題を考えさせ、経営視点に立ち続ける
  • 経営者講義でリアルな課題を学び、実践的な知識を身につける
  • 前期の修了生がメンターとして参加し、議論の活性化を支援しつつ、期を跨いで仲間の輪を広げる

経営者候補育成のあり方を模索している経営者、人事のみなさん、組織の中核である多忙な部長を本質的に鍛える施策の参考になれば幸いです!

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